ブランドジュリエ paris通信 パリの有名フロリスト ステファン・シャペル
パリのフローリスト、ステファン・シャペルのお店へ。 近くへ行ったついでに、ちょっと遠回りをしても見ておきたい場所ってありますよね。 私にとってフローリスト「ステファン・シャペル」のお店は、そんな場所の一つです。 ルーブル美術館からそう遠くないリシュリユー通り、パレロワイヤルのすぐお隣にあるので、 パリ歩きのついでに立ち寄られた方も多いかもしれません。 ステファン・シャペルさんを知ったのは、ルノートルのプレス会。 夢のようなテーブルアレンジを手掛けていたのが彼でした。 ガーリーパワー炸裂!とでも表現したくなるような、 まるでソフィア・コッポラ監督作品「マリーアントワネット」そのもののお花たちを見て、 これを男性フローリストが作成したと知ったときは本当に仰天したものです。 その後、ピエール・フレイさん(https://www.blancdejuillet.jp/paris-blog/3519/) の住まいを撮影させてもらった時も、やはりステファン・シャペルさんが花を担当していて、 ますます彼の仕事に興味を寄せることになりました。 ステファン・シャペルさんのお花は、 「ふんだんに」とか「存分に」という言葉がぴったりくると思います。 圧倒的なボリューム感でもって、その花自身の持ち味をあらためて堪能させてくれるような・・・ 初秋のある日に立ち寄った「ステファン・シャペル」のお店は、こんな感じでした! いつも楽しみな店先の演出は、このときはビバーナムとヒースがメイン。 日本のもみじ、数年前からパリのガーデニング界で人気なのですが、 こちらは笹の一種と、ススキですね。和の風情とはまた違った趣があります。 「枯れた」感じではなく、「しっとり濃密な」感じ? お店の中へ入ってみましょう。 栗がありますね。 紫陽花やトルコキキョウ、バラなどが、色ごとにグラデーションで陳列されています。 枝物や葉物をたっぷりと使うアレンジ、素敵ですよね。 ラウンドのブーケはクラシックな安定感があっていいですが、 枝物や葉物が入るブーケはフォルムがイレギュラーになって、ポエティックだと感じます。 なんと、ブドウの枝も! 贅沢〜! ドライフラワーにもご注目。一昨年頃からの流行です。 ドライフラワーは、ユーカリの葉と同じで、 マットな質感がインスタグラマーたちのセンスにフィットした模様。 常々感じている事なのですが、花はパリジャン・パリジェンヌにとって (というか、フランス人、ヨーロッパ人にとって)、インテリアの一部なのです。 花道の伝統のある日本では、花はフラワーアレンジメントで、すなわち習い事、 というイメージがあるかもしれません。 床の間に飾ったり、習い事で学んだ作品だったり、それだけを単体で鑑賞する、主役的な存在。 それに比べると、パリの花はもっと暮らしに溶け込んだ立ち位置で、主役はあくまでも人間です。 この感覚、うまく伝わるでしょうか・・・ ドライフラワーが流行ったことからも、インテリアとしての花の役割が見えてくると思うのです。 さてこちら、グリーンだけで見せるコーナーも、ワイルドでいいですね! 植物のいい「気」を頂戴する気分。 ショップの奥にあるアトリエでは、フローリストのお二人が忙しく作業をしていました。 ホテルやレストランを顧客に抱える「ステファン・シャペル」ですから、 コロナ禍の影響は大きいはず。 と同時に、家で過ごす時間が長くなった人々は、暮らしの中の花の存在がいかに重要かを再認識してもいます。 フローリストさんによると、個人のお客様からの注文は、今も安定しているとのことでした。 今年3月から5月まで続いた外出制限中、私も新鮮な切り花を恋しく思い出していた一人です。 そして今また、いつ何時、あの時のように家に閉じこもることになるのか? 楽観できない状況です。 あの時のことを忘れずに、家の中を整えておかねば! 最後におまけとして、ステファン・シャペル周辺の様子を。 お向かいはメゾン・マルジェラのショップ。メンズです。 すぐそばに、モリエールの像もあります。コメディー・フランセーズのエリアですので! ちなみに、アスティエ・ド・ヴィラットの展示会会場も、このすぐそばなのですよ。 それではまた、アビアントー! Keiko SUMINO-LEBLANC パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者 1997年からパリに移住。パリでの結婚・子育てを経てフリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。 keiko's paris journal <パリ通信 - KSL> パリのライフスタイルを更新中
ブランドジュリエ paris通信 パリ郊外の畑で収穫体験
パリ郊外の畑、 ラ・フェルム・ド・ヴィルタンで収穫体験 秋晴れの月曜日、フランス政府公認ガイドの友人から、嬉しいお誘いがありました。 「天気がいいので、郊外の農園へ野菜をとりに行こうと思います。 恵子さんもどうですか?」 パリ近郊には自分で収穫するスタイルの農園がいくつかあること、 雑誌等の記事で知っていましたが、まだ体験したことはありません。 友人が誘ってくれたラ・フェルム・ド・ヴィルタンは、 電車とバスでアクセスでき、気になるバスの本数も多いとのこと。 公共の交通機関で簡単に行ける農園があるなんて最高です! ぜひ試さねばと思い、彼女に合流しました。 パリ中心から約1時間で到着。そう遠くありません。 ラ・フェルム・ド・ヴィルタンに到着するも、 勝手がわからず、ひたすらうろうろする私たち。 うろうろしてわかったことは、月曜日の営業は14時からということと (知らずに1時間も前に到着していました・涙) 農園が経営する売店があって、そこで農園産の乳製品や他の食品が買えること (驚くほどおしゃれでした!!) 売店前にベンチとテーブルがあり、ピクニックできること、 私たち以外のお客さんは、みんな車で来ていること。 農園のシステムは、以下の通りです。 なす、ピーマン、トマトなど、各野菜畑の前に看板があって、値段が記されています。 この値段を参考に、自分の好きな作物を好きな分量だけ収穫し、最後にまとめてお会計。 キュウリやズッキーニは、サイズで値段が変わりました。 例えばキュウリの場合、15cm以下は1kg8ユーロ程度、 それ以上のサイズなら2ユーロ程度。 6kg収穫すると破格値になり、確か8ユーロ程度だったと思います。 フランスの野菜はキュウリでもナスでも、日本のものより大振りです。 本当はそこまで大きくしないほうが、 種子の部分が小さく身が引き締まっていて美味しいと思うのですが。これも文化。 最近になって、ミニ野菜も出回るようになりましたが。希少性を反映してか割高です。 6kg収穫すれば激安! とはいえ、一般の家庭で6kgの野菜はなかなか消費できません。 友達家族を何組も誘って、一緒に収穫に行くのが賢そうです。 私たちのこの日の目的は、ただ単にこの農園を試すこと(知ること)。 お得感は求めていなかったので、私は15cm以下の高いキュウリと、 20cm以下のやはり高いズッキーニを収穫しました。 せっかくわざわざ遠くまで来たのですから、自分の欲しい野菜を持って帰りたいです! それに第一、キュウリやズッキーニを2、3本買ったところで、高額にはなりませんものね。 ズッキーニは、緑と黄色の2種類が。 くれぐれも、花をとってはいけません! 看板にそう書いてありました。 「でもズッキーニの実と一緒に収穫する分にはいいでしょう」と勝手に解釈し、 4本ほど花付きのものをピックアップ。 しかしお会計の際に、「花はダメなんですよ」と注意を受けましたので、 みなさま、もしラ・フェルム・ド・ヴィルタンでズッキーニを収穫される際は、 どうぞ私のまねをなさらないようお願いいたします。すみません・・・ ビニールハウスもいくつかありました。私のような未経験者は、 こういう特別な設備に目をひかれるようで、まず真っ先にここへ直行してしまいました。 トマトのビニールハウスには、大きくてひだのある形が特徴の「牛の心臓」 という名のトマトや、マルチカラーのカクテルトマトなど・・・があるはずでしたが、 土日のお客さんが収穫し尽くした後だったようで、 赤く実った実は見当たりませんでした。残念。 ビニールハウスではない、露地のトマト畑の方には、 実ったものがいくつか残っていました。 このように、歩いて、見て回るだけで、結構な運動です!! 「フランボワーズは週末にほとんどとられてしまって、もう残っていませんよ」 と、農園の方の説明でしたが、私は諦めずフランボワーズ畑の中も歩きました。 とりこぼれのような実が、所々に残っていたのです。 それらを摘んで、自分の口の中に入れたり、バッグのポケットに入れたり。 友達と話をしながら、ぶらぶらと・・・ 青空の下、柔らかい土を踏みながら、贅沢なお散歩。 そしてなんとも素敵なことに、ラ・フェルム・ド・ヴィルタンには、花畑もありました! バラ、ダリア、金魚草・・・ 花は畑の作物の受粉を助ける蜜蜂のために、ぜひとも必要なのだそう。 パーマカルチャーの取材をすると、農作物以外の花や木がいかに畑にとって重要かを、必ず説明されます。 植物多様性。きっと人間の社会も同じですね。 最後にサラダ菜をとって。カマがなくても、看板にあるようにこう、 ぐるっと360度回転させれば取れますよ・・・とのことで、実際その通りでした! 成功すると嬉しい〜! 農園出口にあるスタンドで、収穫した野菜や果物を計ってもらい、お会計をします。 お会計を済ませてから売店へ行って、 ラ・フェルム・ド・ヴィルタン産のフロマージュブランを買いました。 2ユーロちょっと。お安い!! 乳製品は、産地で買うとびっくりするほどお安いです。チーズもそう。 さて、この日初めてラ・フェルム・ド・ヴィルタン体験をし、 次回への気づきがいくつかありました。みなさんと共有させてくださいませ。 ① 軍手、ハサミ、新聞紙(花やズッキーニをまとめるため)、 タッパー(ミニトマトやフランボワーズを入れるため)を持参する。 現地に箱やビニール袋はあるが、有料。 ② バスは朝と夕方に本数が多い。(11時〜16時は、毎時2本程度) ③ 月曜日は避ける(週末にとり尽くされてしまうので) 驚くことに、パリ旅行中にこの農園で収穫体験をした方もいらっしゃるようです。 確かに、素敵な体験でした。ミニトマトなどは、 3日後くらいの方がかえって美味しかったくらい、どの収穫物も新鮮でした! さて、この素敵な体験、パリジェンヌ等の間でも流行中のようです。 私たちが収穫をした月曜日の午後にも、数名の若いパリジェンヌの姿がありました。 昨今の環境コンシャスが、コロナ禍を受けてさらに定着した感があります。 パリジェンヌたちの自然を身近に感じたい欲求を、パリ最大のデパート、 ギャラリーラファイエットはしっかりと捉えています。 今年もパリを一望する屋上ルーフトップは、野原のような演出です。 オペラ座、パリの真ん中に出現した原っぱ。 「富士には月見草がよく似合う」ではないですが、 鉄の貴婦人エッフェル塔には、猫じゃらしが意外によく似合っていると思います。 それではまた、アビアントー! https://www.viltain.fr Keiko SUMINO-LEBLANC...
ブランドジュリエ paris通信 コートダジュールの夏2020
コートダジュールの夏 2020 前回の南仏ムージャン村バーチャル旅行、大変ご好評をいただき嬉しい限りです! 今回はその後編として、8月末のコートダジュールへ! カンヌ、アンティーブ、ニースへお連れいたします。 まずはカンヌから。 カンヌといえば、カンヌ映画祭ですね。 会場のパレ・ド・フェスティバルの写真はありませんが、 シュロの並木が続く海岸通りのカットを。 これが日常の世の中があるのだ、と、久しぶりに訪れ圧倒されました。 実は私、1994年に5ヶ月間、カンヌでフランス語を学んでいます。 1993年当時カンヌ国際学院と呼ばれていた、カンヌ国際キャンパス。 とてもいい学校でした。フランス19世紀の作家ポール・ヴェレリーが創立した学校です。 当時、カンヌ国際学院の学生たちが通っていた 海沿いのレストラン「イタリアンカフェ」は健在でしたが、 とてもグレードアップされていたので、隣のタバコ屋さん兼カフェで一休み。 ディアボロ・モントを注文。 「ディアボロ・モント」は、ミントシロップをレモネードで割った飲み物。 初めてみたときは、メロンソーダかなと思いました。 フランスの子供たちは、このディアボロ・モントや、 ザクロシロップのディアボロ・グロナディンヌをよく飲みます。 ディアボロ・グロナディンヌの方は、日本ならきっとイチゴシロップのはず。 メロンがミントになって、イチゴがザクロになる。文化は面白いです。 このタバコ屋さん兼カフェはとても居心地が良かったので、 翌日もここで一休みしました。 この日はレンタカーを返却した後だったので、パスティスを注文。 パスティスは、きっとご存知の方も多いですね。 南仏を代表するリキュールです。 八角の香りたつリキュールは、地中海沿岸地域に共通していて、 味わうたびに時間旅行へいざなわれます・・・ ギリシャのウゾ、トルコのラキ、レバノンやシリアのアラック・・・ 地中海が文化の母体だった時代が確かにあったのだ、と・・・(ただののんべえですが) ちなみにトップ画像がカンヌのビーチなのですが、 初めてカンヌの海を見たとき、海水の透明度に驚いたことを思い出します。 きれいな海は世界中にたくさんあると思いますが(例えば、沖縄ですとか)、 都市と青い海が共存する世界があることに驚いたのです。 カンヌ映画祭の会場パレ・ド・フェスティバル前のハーバーにも、こんなに魚がいましたよ。 続いて、アンティーブ! カンヌからわずか5kmのところにある港町アンティーブが、 私は多分、コートダジュールでいちばん好きです。 チャーミングな旧市街、砂のビーチ、ヨットハーバー、プロヴァンスのマルシェ・・・ ここには全てがある! ピカソ美術館、ペイネ美術館も見逃せません。 アフターコロナ、ウィズコロナの2020年夏、 アンティーブのプロヴァンスマルシェはマスク着用が義務でした。 このマスク着用義務は、地域の条例によって様々なので、注意が必要です。 この後滞在したニースでは、街中どこでもマスク着用が義務でした。 (ちなみにパリに帰ったら、その日から全域でマスク着用が義務付けられていました!!) 南仏の露地野菜が集まるマルシェ、見ているだけでも元気が出ますね。 生鮮野菜が発する「気」が、ものすごい!!! このマルシェで、念願のソッカを食べました。 ソッカは地中海地域にみられる食べ物のようですが、 私が人生で初めて食べたのはニースで、「ニース名物」だと聞かされました。 フランス語のウイキペディアを見ると、 やはり「ソッカはニースの名物料理」と出てきます。 ヒヨコ豆の粉を水でといて、オリーブオイルで焼き上げる、 ただそれだけの一品。味付けは、塩コショウのみ。 シンプルなだけに美味しく仕上げるにはコツがあるそうで、 ソッカ職人によると、銅鍋を使い、土のかまどで、薪の炎で焼き上げること! ここアンティーブのプロヴァンスマルシェのご夫婦は、 熟練の流れるような作業で、行列するお客さんに焼き立てソッカをサーブしていました。 一切れ2.5ユーロ。これがおいしいからびっくりです。 南仏の太陽のマジックかもしれません。 アンティーブのプロヴァンスマルシェ周辺には、 とても気の利いたショップが集まっています。 このカゴ専門店、階段に合わせたユニークなカゴを販売していました・笑 布屋さんも素敵でしたが、写真がなく・・・ごめんなさい! 最後はニースで締めくくりです。 ニースは、芦屋ブランドジュリエオーナーの中川さんにとっても、 特に思い出深い土地だと伺っています。 下の写真の奥の方に、かの有名なホテル・ネグレスコの、ピンクのクーポルが見えますか・・・? 私がニースに一泊したこの日、2020年8月27日は、 ツールドフランスの前夜祭のようなものがあって、 ホテル真正面の公園がステージ、周辺は交通規制が敷かれ、大変な思いをしました。 #ILOVENICE などのインスタレーションは、そのためのようでした。 ちなみに以下、2020年8月28日朝9時半の各地のお天気です。 ニース25度晴れ時々曇り、 ロンドン14度雨、 ブリュッセル17度晴時々曇り、 パリ17度雨、東京は午後4時半頃で33度晴れ 東京はともかく、同じヨーロッパでこの違い!! クオリティーオブライフという言葉が、人々の頭をよぎるわけです。 あー・・・ため息が出そうになりますが、パリ暮らしももちろん好きでして・・・ *ニース解放75周年の式典に遭遇 このスクリーンショットを撮りながら、私は旧港方面へと歩いていました。 ホテルのレセプショニストに教えてもらった、小さなビーチへ行くために。 そのビーチがこちら。 海岸通をドライブしていると、こういう魅力的なミニビーチに出くわします。 ここは、ル・プロンジョワール(飛び込み台)という名前のレストランの脇にあり、 本当に3段の白い飛び込み台が海に迫り出していました。 次回はこのレストランへ行きたいなあ。眺めが最高のはず!! https://www.leplongeoir.com でもビーチは、私にはちょっと小さすぎたかも知れません。泳ぐ時に岩が怖いのです・笑 ホテル前のビーチはこんな感じでした! ニース、って感じ!! ニースのビーチは石。カンヌのビーチは砂。 カンヌ国際学院の先生が、「街ならニース、ビーチならカンヌ」 と言っていたことを思い出します。なにせ石は、足が痛い。 こう眺めている分には美しいですがね。 *南仏らしい色が印象的な、ニース旧市街! そのホテルは、旧市街とビーチへのアクセスのいい所を選んだのです。...
ブランドジュリエ paris通信 2020年夏、南仏ムージャン村へ
2020年夏、南仏ムージャン村へ! なんとも不思議な2020年の夏が、早くも終わろうとしています。 通常の自由がない自重ムードの中でスタートし、途端に猛烈に暑くなり、そしてもう9月。 世界中の誰もが、違和感のような戸惑いを感じていることでしょう。 夏のパリ、フランス人、と言えば、やはりバカンスです。 今年は3月から5月にかけて、約2ヶ月間の外出制限を体験したフランス国民ですが、 しっかりバカンスは楽しんでいました。 あれだけ経済危機、収入減、将来への不安を問題にしていたのに、7月になればちゃんと休む。こんな思考回路といいますか、行動パターンといいますか バカンス文化のない国の人々にはなかなか理解できないかもしれません。 フランスでは人間の当然の権利として認められ、 バカンスは絶対に取った方がいいものだという常識が定着しています。 とは言え、ごくわずかですが、今年の夏は働くと決めたフランス人も存在します。 自営業の飲食店経営者などがそうです。 フリーランスの私にとって、バカンスは本当に贅沢なこと。 なぜならお勤め人と違って、有給休暇がないから。 休む イコール 収入が圧迫される、というわけですので ここ数年バカンスらしいバカンスを楽しんではいませんでした。 が、今年は私もフランスの人々にならい、旅立つことに! たった3泊4日ですが、南仏、コートダジュールへ。 2020年、コロナウイルスに翻弄され続けている私たちは、 もしかするといつも以上に、息抜きや気分転換を必要しているのかもしれません。 旅立つと決まったら、まずは移動手段の手配です。 パリからコートダジュールへは、飛行機、 またはフランスの新幹線T G Vでアクセスできます。 私は今回T G Vを選びました。 飛行機に比べて料金が安いことと、狭い機内で密になることを避けるためです。 T G Vのチケットは、出発日や時間で料金が大きく変わります。 幸い時間の自由の利く身ですので、安いタイミングを探し、 往復約150ユーロ程度でチケットを購入。 約2万円、お手頃ですよね。 電車のチケットを購入したら、次は宿です。 コートダジュールの知り合いに相談したところ、 ムージャンのル・マス・カンディーユを勧められました。 カンヌやニースのようなバカンス客が集中する海沿いを避け、 静かなムージャン村に滞在する。悪くありません。 *ル・マス・カンディーユ敷地内からのムージャン村の眺め ムージャン村、ご存知ですか? 南仏によく見る、小高い丘のてっぺんのオレンジ色の古い村。 ムージャン村は、コートダジュールきっての美食村として、 またピカソが晩年を過ごした村として知られています。 私がむか〜しカンヌに滞在していた頃、 ホームステイ先のマダムと外食するときは、必ずムージャンまでドライブしていました。 ル・マス・カンディーユは、19世紀の農家のお屋敷(ル・マス)を起源とするホテルで、 ムージャン村一番のラグジュアリーホテルなのだそう。 私の一人旅にはもったいないですが、これもご縁と思い、2泊予約。 パリ・リヨン駅発、朝9時半のT G Vで、カンヌへ。 約5時間後、カンヌに到着します。 T G Vの車窓の風景が、フランスらしい広大な農地から、 だんだんと乾いた赤土の南仏色に変わってゆき・・・そしてついに地中海! ああ、やっぱり、バカンスに行く決心をしてよかった!! カンヌの駅でレンタカーをピックアップし、いざ、ムージャン村へ! 5、6年ぶりの運転です・・・心もとない。 南仏の小さな村は、道幅が狭く、坂道は尋常でない急斜面なことがあるのですが、 ル・マス・カンディーユを目指しながら道を間違え、 そんな道に出くわし過酷な思いをしました。 一時は泣きそうになりながらも・・・ 到着したらこの展望!! 感動しましたー! 向こうに見えるのは、香水で有名なグラース村だと、あとでホテルの方が教えてくれました。 そしてチェックインをすませ、部屋に入り、決めたのです。 ブランドジュリエのパリ通信に、ル・マス・カンディーユのことを書こう、と! 南仏らしいインテリアの要素が、満載なのです! ル・マス・カンディーユはファイブスターホテル。 私が予約したのは、一番ベーシックなお部屋です。 自分の部屋の窓から、グラース村が見えます! ローテーブルの上に、支配人のコスマイさんが用意してくださった ウェルカムフルーツがありました。 ミニバーの中のミネラルウォーター、炭酸水、コカコーラは、全て無料とのこと。 パリを出発してから何も食べていなかった私は、心置きなくフルーツを食べ、 よく冷えた炭酸水を飲みました。 ラッキーなバカンスのスタートです! ゲストルームは、南仏らしいオリーブ色とオレンジで整えられています。 オリーブ色がほとんどグレーに近く、そのせいでとてもシック。 ゲストルームの入り口は、石張り。 これだけでも「玄関」という感じが演出できますね。 カーテンは、オレンジ色の裏地とダブルになった地厚のものと、刺繍を施した薄手の麻。 地厚のカーテンの方は遮光や断熱も完璧で、 麻の方はプライバシーを守るのに好都合でした。 気づけばもう午後6時すぎです。 7時半に予約したディナーの前に少しでも泳ぎたかったので、急いでプールへ。 午後6時半になっても、この明るさでした。青空の中に、小さな三日月が見えます。 広大な敷地やプールの写真は翌日撮ることにして、 とにかく泳ぎ、シャワーを浴びて着替え、ディナーへ向かいます。 茂みからフワッフワの子猫が飛び出し、私を誘導してくれました。 ル・マス・カンディーユが誇るテラスにテーブルが並んでいます。 南仏の蝉時雨をB G Mに、グラース村を眺めつつ・・・...
ブランドジュリエ paris通信 ジャックマール・アンドレ美術館
猛暑のパリ、 ジャックマール・アンドレ美術館へ。 パリは8月頭から、気温が38度ほどまで上昇する毎日です。 日本も、ようやく梅雨が明けたと思ったら、 暑い毎日が続いていると聞きます。 日本と違ってフランスでは、冷房を完備している一般家庭はまれ。 パリの場合は景観保護のために室外機の設置が不可という理由もありますが、 そもそも冷房の必要のない土地なのです、つい20年ほど前までは。 ウィキペディアに1881年以降のパリの平均気温データがあるので、 検索していただくとよく分かると思います。 それによると6月〜8月の平均最高気温は、 滅多に25度を超えていません。 25度なら、冷房なしで過ごせますね。 ところが・・・ 去年の夏、私は生まれて初めて気温48度を体験しました! マラケシュではなく、ここパリで! 地球温暖化は恐ろしいところまで来ているようです・・・ 冷房のない、暑いパリの過ごし方として、 美術館めぐりは私のお気に入りです。 美術館は冷房を完備していますから! 図書館もいいですが、コロナ禍以降は以前のような使い勝手は望めません。 というわけで、前置きが長くなりましたが、 先日ジャックマール=アンドレ美術館へ行きました。 在仏23年にしてようやくです。 ジャックマール・アンドレ美術館、ご存知ですか? パリのリピーターさんの中には、すでに訪問された方も多いと思います。 銀行家の家庭に生まれ、 ナポレオン3世に仕える政治家となったエドワール・アンドレが、 画家であった妻ネリー・ジャックマールと共に 世界中を旅して集めた美術品を展示する19世紀の大邸宅。 美術館のサイトによると、 エドワール・アンドレ氏はいわゆる早期退職をして、 自分の趣味、すなわち美術品収集を始めたのだそう。 その後、自身の肖像画作成を、当時人気肖像画家だったネリー・ジャックマールさんに依頼。 こうして2人は出会い、美術品収集という共通の趣味に情熱を傾け、 生涯を共にしたのだそうです。 アンドレ氏は当代屈指の富豪ブルジョワ家出身、 ジャックマールさんは一般家庭出身で職業画家になった女性。 アンドレ氏ファミリーは皇帝派、 ジャックマールさんファミリーは王家派、 と、バックグラウンドは正反対の2人でしたが、 とてもいい夫婦になったというのですから素敵です。 収蔵品は、ルネッサンスのイタリア絵画、 18世紀のフランス美術品、インドや日本のオブジェなど。 でも、この美術館に入ってすぐに思いました、 「これらの美術品を鑑賞すること以上に、 19世紀フランスの大ブルジョワジーが暮らした 大邸宅を体感することに意義がある」と。 贅を尽くした当時の暮らしがどんなものだったのか、 小説や映画の世界ではなく、実際にその中に入って知ることができるわけです。 間取りや各空間の配置の仕方など、 実際にその場に立ってみてわかることは多いと思います。 ニッシム・ド・カモンド美術館もそうですね。 ということで、今回の見学は、インテリアに注目することにしました。 ブランド・ジュリエファンの皆様も、きっと喜んでくださるはず! 赤い壁に覆われた「絵画の間」から、アーチ型の窓辺を持つ「大広間」へ。 たっぷりとしたカーテンのボリューム感と、凝った細工のタッセル。 存在感がものすごい、邸宅のカーテンを観察するのが好きです。 暖炉の上には、金の置き時計と、お揃いの金の燭台。 ザ・フランス! という感じで、 左右対称、安定感のあるクラシックな装飾のルールでありお手本。 暖炉の足元に目をやると、板張りの床のなんと見事なこと! 大広間の床は、床だけ見ても工芸品の美しさです。 19世紀に生まれたオスマニアン建築の特徴の一つが、 この板張りの床といいますが、本当になんて贅沢なことでしょう。 ここは、「書斎」へ向かう通路の間。 ネリー・ジャックマールさんは、 この館を収蔵品ごとフランス学士院に寄付したのですが、 その時にどの作品、どの調度品を、どこに飾るか、細かく指示したそうです。 そう知って眺めると、ますますインテリアが面白く感じられます。 こちらが「書斎」。シャンデリアに注目! 「音楽の間」では、上階部分に演奏家たちを集め、 下のフロアで舞踏会を繰り広げたのだそう。 空間のダイナミックさといい、ルイ16世スタイルの椅子といい、 圧倒的な迫力があります! この「音楽の間」の向こうにある「冬の庭」が、 今回の私のいちばんのお気に入りでした。 優美な曲線を描く螺旋階段。 鉢植えの植物が映える、大理石の色使い。採光。 贅沢とはこのこと! 美術品収集も贅沢ですが、南国の植物をパリの邸宅にもつことも、 当時は相当な贅沢だったと思います。 この「冬の庭」の先に、「喫煙室」がありました。 中国から渡った巨大な壺が、部屋の入り口の左右に配され、 オリエンタルなオブジェが目立つこの空間に、日本のものは? と思ったら、ありましたよー、暖炉の上に伊万里が2つ! ここでもやはり、左右対称、安定感のあるクラシックな内装テクニックです。 さあ! リボンのように軽やかで優美な螺旋階段を登って、2階へ! 上から見下ろす「音楽の間」。実に洒落た作りですよね。 ここから先は、イタリア美術に捧げられた空間です。 アンドレ氏とジャックマールさん、 お2人は自分たちの収集品にふさわしい空間を作るために、 わざわざ工事まで行ったそうです。 イタリア美術の空間は、まるでベネチアです!! 重々しい天井の細工! そしてなんと、ボッティチェリがありましたよ! 私はこの美術館の収蔵品に関する知識が全くないまま見学していたので、 ルネッサンスの巨匠の作品を個人がコレクションしていたことに、 本当にびっくりしてしまいました。 コレクションの詳しい情報は、美術館のオフィシャルサイトをご参考に。...
ブランドジュリエ paris通信 パリプラージュ
パリの夏の風物詩、パリプラージュ 2020年も開催中です! 実に不思議な2020年にも、夏は巡ってきました。 現在パリは、バカンスムードいっぱいです。 コロナイヤーの今年の夏休みを、フランス人はどう過ごしているのか? 気になりますね。 私の周囲を調査したところ、いつもは必ず外国旅行をしている人でも、 今年はフランス国内旅行に残ると答える人がほとんどでした。 「できればせめてスペインやギリシャへ行って、 美しいビーチ(と、フランスより安い物価)を楽しみたいけれど、 バカンス中に国境封鎖されても困るから」 というのが、その理由。 幸いフランスは、本当に恵まれた国土を持つ国。 変化に富んだ自然もあれば、文化遺産もたっぷりあります。 「オーベルニュの森林をサイクリングして、 南仏アヴィニヨンの実家に帰って、 海沿いのラ・ロッシェルに住む妹夫婦を訪ねたついでに、 バスク地方の友人の別荘へ寄って・・・」 と、計画を話してくれた友人もいました。 わざわざ国外へ行かずとも、山あり、海あり、グルメありの 豊かなバカンスを過ごせること間違いなしです。 さらに言うと、友人宅や親戚宅を尋ねる旅は、予算の心配もありませんね。 私のようにパリに残る人は、パリ市観光局が企画する 「パリを再発見するガイドツアー」 に参加したり、毎年恒例のパリプラージュへ行ったり。 ガイドツアーもパリプラージュも、無料で楽しめるのが嬉しいです。 パリプラージュは、ご存知の方もきっと多いと思います。セーヌ川岸がビーチに変身するパリプラージュ。 2002年に始まり、以来毎年開催されているパリの夏の風物詩です。 数年前からはセーヌ川沿いだけでなく、 ウルク運河沿いでも開催されていて、 こちらのパリプラージュの方がパリジャンたちには人気が高い印象。 コロナ禍の外出制限中、 今年のパリプラージュはどうなるだろうと思いましたが、 今年も無事開催されました。 そして、さすが臨機応変が得意なフランス人、 なんとコロナイヤーにふさわしい演出なのです!(笑) セーヌ川沿いを飾るパネルは、安全距離の確保などのコロナ対策を、 ユーモアを交えて教育する内容。 そしてなんと、無料でPCR検査と抗体検査をしてもらえる青空検査所も登場! 医師の紹介状なし、予約なしで、誰でも検査してもらえる。 ということで、14時のスタート時には長蛇の列。 パリ在住者に限らず、地方の人も、外国人も、並んでいました。 私もPCR検査をしてもらいました。 あの長〜い綿棒が怖かったのですが、ニューヨーク市長の 「ほら、こんなに簡単なことですよ」 という実演を思い出し、勇気を出して挑んだところ、 思ったより全然平気でした。 すーっと入っていって、違和感なく、担当の看護師さんが上手だったのだと思います。 抗体検査のほうは、パチっと指を刺して少量の血液を採取。 身体の中でも一番敏感な指先を刺すなんて! と、怖くてしょうがありませんでしたが 「PCRに比べればなんでもないですよ」 という看護師さんの言葉通り、確かにほんの一瞬の出来事。 サージカルマスクももらって、これだけのことを全て、無料で受けられる。 パリ市に感謝です。 抗体検査のほうは、その場で結果がわかりました。 医師が二人いて、診断書を渡してくれました。 PCR検査のほうは、後日結果が携帯に届くとのことです。 パリプラージュでコロナ検査ができることを、 実は私は知らなかったのですが、次女が教えてくれたのでした。 彼女はこれからバカンスに出るにあたり、 その前に自分が感染源にならないことを知っておきたかったのだそうです。 「友達の中には社会人もいるから、もし感染させたら困る」と。 安心してバカンスに出たい、みんなそう思っていると思います。 その希望に応えるためにも、この手軽な青空検査所は有益だと思いました! 青空検査所だけでなく、ベビーフット(卓上フットボールゲーム)や 巨大チェスなど、他のお楽しみももちろんあります。 次回は一人で本を手に、または友達と一緒によく冷えたロゼを持参して、パラソルの下で過ごしたいと思います。 さて、この日はついでにセーヌ川沿いを散歩しました。 パリで一番美味しいアイスクリーム屋さんと名高い、 ベルティーヨンでアイスクリームを食べて、修復中のノートルダム寺院に挨拶して。 外国人観光客のほぼいないパリは、程よい賑やか加減です。 冒頭に書いた、 「わざわざ国外へ行かずとも、山あり、海あり、グルメありの豊かなバカンスを過ごせること間違いなしです」、 日本もそうですね。 日本も豊かな観光資源を持つ国です。 日本から届くニュースを聞くかぎりでは、 その豊かな観光資源を満喫するのは、 もう少し待ったほうが良さそうです。海も山も逃げませんから・・・ 次回も夏のパリのリポートをお届けします! どうぞお楽しみに! それではまた、アビアントー! Keiko SUMINO-LEBLANC パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者 1997年からパリに移住。パリでの結婚・子育てを経てフリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。 食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。 また、翻訳家として単行本も共著。 keiko's paris journal <パリ通信 - KSL> パリのライフスタイルを更新中