
Paris通信 パリジェンヌの住まい訪問 エロディさん宅
ブランドジュリエ中川オーナーによるエロディさん宅訪問動画、もうご覧になりましたか? エロディさんはパリ観光局のMICE開発責任者で、パリのことならなんでも知っている専門家です。 住まいの中にも、彼女のパリ愛があちこちに見られました。 パリのアパルトマンらしい立派な板張りの階段を登った最上階。 ドアを開けて出迎えてくれたエロディーさんが、真っ直ぐに案内してくれたのはキッチンです。 壁紙の「チュルゴの地図」が印象的! 1739年に作成された「チュルゴの地図」は、当時のパリの様子がわかる貴重な資料です。 南北がひっくり返っているのが特徴で、右岸が下に、左岸が上に描かれています。 エロディさんは自分の家の壁の寸法に合わせて、この壁紙を特注したのだそうです。 「インテリアは壁と床が命ですよね」と、中川オーナー。 実際、この物件を購入した後の リノベーション工事で、エロディさんが最も予算をかけたのが壁と床でした。 床は、オスマニアンのアパルトマンと同じヘリンボーンの板張り。 「ベースにコルクを敷いているので、下の住人に騒音が漏れることがありません。 音を気にせず暮らせるので、お金はかかりましたがとても満足しています」 と、エロディさん。 予算をかけるところにはしっかりかけて、節約できるところはきっちり節約するのがエロディさん流です。 システムキッチンはIKEAで調達し、ワークトップだけ石の専門業者に花崗岩のものを注文。 「花崗岩は大理石よりも丈夫で、キッチンに最適なんです。 熱い鍋を直接置いても跡がつかないんですよ」と、エロディさん。 色の統一感も完璧で、上質感もあって、これがIKEAベースのキッチンだとは思えませんね。 大きな食器棚は、アヴィニョンの実家からのお下がりです。 実家ではリビングに置き、本棚として使われていたとのこと。 家族から受け継いだ食器類やリネンがきれいに整頓されたキッチンを見せていただきながら、 都会で一人暮らしをしていても、 こうして常に家族を感じさせる要素に囲まれているところが、いかにもフランス人らしいと感じました。 リビングは、エロディさんご自慢の床と、リーン・ロゼのピンクのソファが素敵です。 このソファは長年夢見ていたモデルで、せっせと貯金してようやく購入したのだそう。 そうやって手に入れたソファと一緒に生活するのは、満足もひとしおのはずと想像できます。 そして、ギャラリーや美術館に通うことが日課になっているエロディさんらしく、 リビングのあちこちにアートと本が置かれていました。 パリに関する書籍もたくさんあり、 その中から、最近実家から持ち帰ったという1冊を見せてくださいました。 なんと、1900年のパリ万博のカタログ! ひいおじいさまとひいおばあさまが、ハネムーンにパリ万博に来た際に購入したものでは、 というのがエロディさんの推理でした。なんともロマンチック! 白で統一したベッドルームの奥に、小さなシャワールームがあります。 ベッドリネンとカーテンに、アンティークのシーツが採用されていました。 お母様がお嫁入りに持ってきたものがたくさんあって、それを分けてくれるのだそうです。 ウオッシュドリネンのシーツやカーテンはとても高価なものですが、お母様から譲られたものは無料。 それでいて、どんな高級品よりも、これを使うエロディさんにとっては価値があると思います。 自分のための住まいなのですから、自分のために、自分が一番喜びを感じられるように整えたいものです。 エロディさんのお住まいは、コンパクトながら一人暮らしには十分な広さがあって、 何よりも「エロディさん自身が作った自分の城」という感じがよく伝わってくる空間でした。 自分にとって何が一番嬉しいのか? もう一度よく考えてみたいと思わされたエロディさんのお宅訪問。 自分にとって嬉しいことを知ることは、インテリアづくりに重要なだけでなく、人生にとっても重要です。 そして暮らしの中に、自分のルーツを盛り込むこと。これも大切ですね。 それではまた、 アビアントー! Keiko SUMINO-LEBLANC パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者 1997年からパリに移住。パリでの結婚・子育てを経てフリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。

Paris通信 アスティエ・ド・ヴィラット 2023年秋の展示会へ
9月のメゾン・エ・オブジェのタイミングに合わせて、今年もアスティエ・ド・ヴィラットの展示会が開催されました。 世界中から顧客が集合するこの機会、創業者のブノワさんとイヴァンさんは対応に大忙しです。 そんな中でも中川オーナーは特別扱いで、長年の信頼関係を大切にされるお二人であり、中川さんなのだと痛感させられます。 イーストランド島田昌彦社長も同席。 展示会場の上階で新作を含む数々のコレクションが展示され、1階はレセプションスペースになっています。中川オーナーはどんな新作を発注したのか?ぜひぜひブランドジュリエからのお知らせを楽しみにしてくださいませ。 今回のパリ通信では、1階のレセプションスペースのしつらいをお見せしたいと思います。アスティエ・ド・ヴィラットの美意識が満載なのです! アスティエ・ド・ヴィラットファンの皆さま、ブランドジュリエファンの皆さまの、お招きテーブルアレンジの参考になると思い、たくさん撮影しました。 面白かったのは、パリではまだ珍しいフルーツサンドがあったこと。日本人シェフにケータリングを依頼したそうです。きっちり整然とカットされたサンドイッチ、きれいですよね! この日本流のサンドイッチがSANDOという呼び名で、パリのグルメシーンに1つのカテゴリー築いていることをご存知ですか? フランス流のバゲットを使ったサンドイッチでもなく、イギリス流の薄っぺらいサンドイッチでもない、きめ細かく焼き上げた日本の食パンを使った、日本流のサンドイッチがSANDOです。 パリのおしゃれなエリアでSANDOを提供するパン屋さんやカフェがジワジワと増えている、と聞くと、日本で普通にサンドイッチを買って食べている私たちには面白く感じられますね。 そのSANDOに目をつけたブノワさんとイヴァンさんは、さすが日本ツウでグルメだと思いました!(僭越です・・・) お隣は応接ルーム。 さらに奥が上映室になっていて、アスティエ・ド・ヴィラットの新作ムーヴィが上映されていました。今シーズンの新作フレグランス「マント・ラ・ジョリー」のモチーフになった街も登場していました。 オリジナルの角砂糖。角砂糖はフランス文化だと思っています。ヨーロッパ統合から徐々にパリのカフェから姿を消していますが、守ってゆきたいアールドヴィーヴルです。 それではまた、アビアントー! Keiko SUMINO-LEBLANC パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者 1997年からパリに移住。パリでの結婚・子育てを経てフリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。

Paris通信 メゾン・エ・オブジェ2023
2023年9月7日から11日の5日間、インテリアとデザインの見本市「メゾン・エ・オブジェ」が開催されました。 ブランドジュリエオーナー中川さんのインスタグラムで、チェックされていた方も多いことと思います。 YouTubeのリポート動画もぜひお見逃しなく。 私も現地で中川さんに合流しました。 その際に、今シーズンの変化として気づいたことを中川さんからたずねられ、何があるだろう?と考えている間に、 先に中川さんから 「私はね、前々回はエコ一色だった記憶があるのですが、今回はとてもカラフルになったと感じたの」とのご意見。 確かにそうなのです。 例えば、照明のインスタレーションで印象に残ったこちら。 フランスの吹きガラス工房Fluïdの作品。 続いてこちら左は、デザインウィーク中にオテル・ド・シュリーで展示を行ったuchroniaのコレクション。 « Think Pink ! » のタイトルが示す通り、明るい色使いが特徴で、フォルムも70年代モダンのポップ感があります。 右は、やはりデザインウィーク中に開催されたエキシビジョン « Graphisme à Ciel Ouvert »のポスター。 右と左、共通点は「フューチャーパステル」とでも表現したい、ちょっとデジタルな明るい色使い。 中川さんが感じ取った「色」も、こういった感じのものだったのではと思います。 このほか、入場バッヂを入れるケースがビニールから紙に変わっていることも、中川さんは指摘していました。 そうなのです!これはメゾン・エ・オブジェだけでなく、 食品見本市SIALや、スタートアップとハイテクのViva Technology などなど、あらゆるサロンのスタンダードになっています。 しかも回収して、リサイクルも! 小さなことに思えますが、見本市の規模が非常に大きいので、実際には大きなインパクトがあるはず。 とてもいい取り組みだと思います。 ついでに言いますと、段ボールをデコレーションに使ったり、ディスプレイ什器に取り入れたりすることも今では一般的。 デパートやスーパーでも目にします。 メゾン・エ・オブジェも例外ではありません。 十分おしゃれですし、紙なのでリサイクルもできます。軽いところも便利で、いいことづくし! 最後に、見るとどういうわけか嬉しくなる、丸い照明とインスタレーションを。 カフェの照明、丸いランタンですね。 ホールとホールを繋ぐ通路のデコレーションにも、同じランタンが使われていました。 紙製のランタンは、軽くて設置も運搬も簡単だと思います。 たくさん重ねると存在感が出るので、ポイントは「重ね使い」かもしれません。 こちらは、白い球体をテーマにしたディスプレーのインスタレーション。 丸いものがたくさん重なると、夢心地になるような。。ちょっと非現実的なムードに、わくわくと心が踊ります。 丸いランタンを重ねる使い方は、予算面でも設置の面でも、簡単に取り入れられそうですね。 それではまた、 アビアントー! Keiko SUMINO-LEBLANC パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者 1997年からパリに移住。パリでの結婚・子育てを経てフリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。

Paris通信 ブロカントの季節
春は大掃除の季節。そしてブロカント、フリーマーケットの季節です。 日本では、大掃除は1年の節目の12月と決まっていますが、フランスでは春。 なぜかというと、冬の間締め切っていた窓を全開にして、家全体をきれいにするのにぴったりの季節だから。 大掃除をして出てきたガラクタや不用品は、安く売って処分したいですよね。 窓も磨いて、待ちに待った太陽を余すことなく家の中に取り込んで。 というわけで、春はBrocante ブロカント、 Vide-Grenierヴィッド・グリュニエ(屋根裏の物置を空にする、つまりフリーマーケットの意味)の季節でもあるというわけです。 そんな春の週末、パリ市内を歩けば必ずどこかでフリーマーケットに当たる、というくらいあちこちで開催されています。 予定のない週末のアクティビティには嬉しいもの。 今回は、ご近所で開催されていたフリーマーケットの様子をお見せします。 雑誌で見る蚤の市の風景とはだいぶ違いますが、パリの庶民の暮らしぶりをご覧くださいませ。 まずはパリ12区Reuilly-Diderotリュイイ・ディドロのフリーマーケット。 ちょっとした街角のスペースを使った、小規模なフリーマーケットです。 蚤の市で見るようなプロのスタンドは皆無で、 「こんなもの買う人いるのかなー」と首を傾げたくなるような品揃えがほとんどでした。 それもまた良し。掘り出し物に出会えるかもしれませんから。 大理石のテーブルのついたキャビネットや、 無垢材のチェストを売るおじさんに値段を聞いてみたところ、チェストは35ユーロでした。 安いです。色を塗り直すか、ニスを取り除くかすれば、見た目の印象がぐっとモダンになるでしょう。 中に収納もできるし、ベランダに置くのにどうだろう、としばし想像。。。 この安さなら、なんの気兼ねもなく外に置きっぱなしにできます。 続いては、Wattigniesワッティニー通りのフリーマーケット。 本当に、大掃除で出た不用品を大処分!という感じ。 庶民パワー炸裂で、工事現場の柵まで利用したディスプレーにはびっくりしました。 ここで思いがけない掘り出し物をゲット!ガラスの水差し、2ユーロです。 うちには花瓶がなくて困っていたので、これはちょうど良さそう。 早速、こんなふうに使っています。他にも、いろいろな瓶を総動員して。 ちなみに、白くペイントした籐の鏡も中古品で、これはエマウスというチャリティーショップで購入したものです。 エマウスはフランス中どこにでもあります。家の不用品を引き取ることもしてくれます。 私も子供服やおもちゃ、絵本など、たくさんエマウスに出しました。 エマウス https://emmaus-france.org アルファルファを栽培する瓶に、ワックスフラワーを生けて。 隣の瓶は、最近話題のノンアルコールジンです。 ヨーロッパでは、アルコール以外の飲み物でアペリチフを楽しみたい、 というニーズが高まっていて、いろいろな種類が出回っています。この瓶も、後で一輪挿しになりそう。 一輪挿しといえば、最近ご近所の食材店シャン・リーブルで、花を買えるようになりました。 地産地消、生産者から届く野菜や果物、チーズなどなど。それらにまじって花があるのは素敵です。 畑の生物多様性のためにも、花は重要なんですよね。 シャン・リーブル https://www.champslibresmagasin.com 最後に、マレ地区のブロカントの写真を。 やっぱりマレのブロカントに立つスタンドはおしゃれ。クオリティも全然違います。 当然値段も高くなりますが、目的買いで、いいものに出会いたい時は、最初からこういう場を選ぶのが得策でしょう。 家庭の不用品大処分のフリーマーケットは、週末の散歩がてらくらいがちょうど。 なんでもブロカント、フリーマーケットのコツは「目的を持って出かけないこと」だそうですよ。 それではまた、 アビアントー! Keiko SUMINO-LEBLANC パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者 1997年からパリに移住。パリでの結婚・子育てを経てフリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。

Paris通信 世界で最も歴史あるファッション雑誌「ハーパースバザー」のフランス版ついに創刊
今年2023年2月末、パリファッションウイークに合わせて、 ファッション雑誌の「ハーパースバザー・フランス版」が創刊されました。 ハーパースバザーといえば、今から150年以上前にアメリカで誕生した、世界最初のファッション雑誌。 高級ビジュアル誌の代名詞でもあります。 さすがの老舗だけあって、これまでに世界40カ国以上で出版されたそうですが、意外なことにフランス版は存在しませんでした。 それがこの出版不況のご時世に、いきなりフランス版が誕生するというのですから驚きです。 ラジオのニュースで聞いたところによると、フランス経済はラグジュアリーが絶好調で、 高級ブティックの前には行列ができている。にもかかわらず、宣伝媒体はインフルエンサーだけになってしまっている。 ラグジュアリーメゾンの広告を獲得するなら今でしょ! ということで、時期を逃さず高級ビジュアル誌の代名詞「ハーパースバザー」のフランス版が誕生した。とのこと。 実はこれまでにも何度か「ハーパースバザー・フランス版」の実現は試みられたそうですが、 その度にアメリカの本部と契約締結に至らなかったのだそうです。原因はなんだったのでしょうね? 話を戻しますと、確かにここ数年、というかおそらくこの10年ほど、 私の身の回りのクリエーターたちも「うまく行っているのはラグジュアリーだけ」と話していました。 ギャラリーラファイエットなどのデパートに行っても、シャネルやディオールなどの ラグジュアリーメゾンの入り口前には、まるで街のパン屋の店先のようにいつも行列があるのです。 まったく実際のところ、うまく行っているのはラグジュアリーだけ、という印象を受けざるを得ません。 そして株式市場を見れば、それは明らかなことなのです。 うまく行っているラグジュアリーメゾンから広告を取るなら今だ!と、 「ハーパースバザー・フランス版」が誕生した、誕生できた、ということにも納得できます。 新しく編集長が迎えられ、ジャーナリスト20名以上が就職した、とニュースで聞き、 この業界のはしくれで仕事をしている私も嬉しくなりました。 廃刊続き、不況続きだった雑誌業界にとっては、大きな朗報です。本物のカメラマンにも活躍の機会が与えられれます。 どんな誌面に仕上がっているのか? 興味があったので、先日4月号を購入しました。 雑誌を買うのは、昔も今も街角のキオスクです。日本と違って、フランスの本屋は雑誌を販売しません。 新聞や雑誌、ポストカード、キーホルダーなどがずらりと並ぶキオスクの店頭。 インスタントコーヒーやチョコレートバーを売っていたりもします。キオスクの風情、パリらしくていいですよね。 「ハーパースバザー・フランス版」は、従来の高級ビジュアル誌らしく、光沢のある紙を使っていました。 その隣に「シルエット」という、聞いたことのないファッション雑誌が並んでいました。 こちらの方は、最近よく見るスタイルの雑誌で、分厚く、手触りのいいマットな紙です。 対照的だなと思い、「シルエット」も購入しました。 左が「ハーパースバザー・フランス版」、右が「シルエット」です。 「ハーパースバザー・フランス版」の中の、ファッションショーのあり方についての記事。 コロナ禍のロックダウン中に、ジョルジオ・アルマーニ氏が宣言した 今後のコレクションについて、ファッションショーについての決断を思い出します。 誰もが気になっている問題。。。 それを正面から取り上げているところには共感します。 「シルエット」の香水特集から。個人的にはマットな紙質と、読みやすく親しみやすいフォントが好きです。 高校生の頃、雑誌の発売日だけを心の支えに日々を送っていたくらい、雑誌を見るのが好きでした。 当時のお小遣いでは欲しい雑誌を全て買うことはできず(今でもできませんが)、 厳選して1冊か2冊だけ買って、ほかはとにもかくにも立ち読みしました。 あの頃の私にとって、雑誌の中には初めて見ること・知ることがたくさん詰まっていました。玉手箱のような存在? インターネットでいくらでも、無料で情報が手に入る現在、もし雑誌を買うならなんのために買うだろう、と考えます。 情報(内容)はもちろんですが、やはり手にとる喜びが重要になる気がします。 それは手触りだったり、身近に置いておきたいデザインだったり。 皆さまはどうでしょう? インテリアの情報こそ雑誌がいいですよね。 ページをめくりながら、自分で整えたテーブルでお茶を飲む。最高だと思います。 それではまた、 アビアントー! Keiko SUMINO-LEBLANC パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者 1997年からパリに移住。パリでの結婚・子育てを経てフリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。

Paris通信 南仏のミモザとマーマレード
気づけばもう3月!すっかり暖かくなりました。 桜の開花ももうすぐ、と、東京の友人から聞きました。 私は今年の2月半ば、南仏カンヌ方面へミモザを見に行きました。 黄色くてふわふわのミモザは、日本でも人気だと思います。 ブランドジュリエのファンの皆さまの中にも、 「3月8日の国際女性デーに部屋に飾ったわ」という方がいらっしゃるかもしれません。 私は以前から、「2月のカンヌでミモザを見る」ことが夢でした。 実はもう30年も前、カンヌに語学留学した時に 「あれ全部ミモザだってよ」と教えてくれた日本人の友人の言葉を、私は信じなかったのです。 「ミモザって小さな花でしょう?あんな大木になるはずがない」と… そのくらいカンヌのミモザの木は大きく、高速道路沿いにずっと続いていました。 しかしなんとも無知で、人の話を聞かない自分であることか。反省しなければなりません。 今では、あの大木が全部ミモザだったことを知っています。 そして南仏の地中海沿いには130kmにわたって続く「ミモザ街道」と呼ばれる一帯があること、 モンドリユでは毎年2月に「ミモザ祭り」が開催されること、 タヌロンはミモザ畑で有名なこと、などなど、よく知っています。 インターネットで簡単に調べられますから。 というわけで、今年はタイミングを逃さず、2月半ばに南仏に出かけたというわけです。 ミモザは、桜のように見頃が短い花ではありませんが、やはり満開に合わせて出かけたいもの。 一応目安として、1月から3月にかけて花の時期を楽しめる、と言われています。 今回実際に現地に行って分かったのは、ミモザと一言で言ってもいろいろな種類があること。 花のふわふわ部分が大きいもの、玉のように引き締まっているもの、葉っぱが細かいもの、広めのもの、などなど。 なんでも1,000以上の品種があるそうです。そして、同じ庭にあっても開花の時期はまちまちであること。 しかも、ミモザは南仏コートダジュール原産ではなく、 1800年代に裕福な英国人がオーストラリアから持ち帰って、カンヌ付近に植えたことが始まりなのだそう。 そこからどんどんと発展した、いわば雑草・・・ ちなみに、ユーカリも同じ時期に、同じ経路で南仏コートダジュールにやってきて、 今ではこの土地の景観を作る代表的な植物になっています。 私がいつも泊めてもらっているドミニクさん宅にも、たくさんのミモザとユーカリの木があります。 この家はもともと、彼の奥様マガリさんのおばあちゃんの家でした。 マガリさんは子供の頃からこの庭を見てきたわけですが、 「私が小さかった頃、庭にミモザは1本もなかったのよ。庭全体が松の木とヒースに覆われていて、今見える花は1つもなかった。 私たちは何も植えずに、植物たちの方で勝手に生えてこうなったの」と教えてくれました。 勝手に生えたミモザの大木が、8本も! しかも、時々注意して若い芽を摘み取らないと、もっと増えてしまうそうです。 そんなに丈夫な木なら、私もパリのベランダで育ててみたいと思い、 摘み取って捨てる小さな苗木を2つマガリさんに持たせてもらいましたが・・・ 彼らは私に馴染んでくれるでしょうか。あまり自信がありません。 さて、そんなマガリさんとドミニクさん宅では、天気がいい日は冬でもテラスで食事をします。 2月半ばもこの通り、何度も外で朝食を食べました。 朝、昼、晩、寒くなければいつでも外のテーブルで。なんて贅沢な暮らしでしょう! しかも、ドミニクさんの手作りマーマレードが絶品なのです! 友人の家の庭からもいできたビターオレンジを、ドミニクさんが3日かけて仕上げます。 「マーマレード作りは、時間がない時にはやってはダメだよ」と、ドミニクさんからのアドバイスです! Dominique Fantino https://www.instagram.com/unchefalamer/ こうして写真を見ているだけでも心が満たされるよう。 そんな記憶をいつも、自分の胸の中に持っていたいですよね。 それではまた、 アビアントー! Keiko SUMINO-LEBLANC パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者 1997年からパリに移住。パリでの結婚・子育てを経てフリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。